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2026.03.30

なぜ今なのか?雇用調整助成金の見直しから見える「次の危機」への備え

 コロナ禍で多くの企業を支えた「雇用調整助成金」について、
2026年3月27日、その在り方に関する報告書が公表されました。

今回の内容を見ていて、
私自身まず感じたのは、「なぜ今なのだろう?」という点でした。

世界情勢を見れば、エネルギー価格の変動リスクや
国際的な緊張状態が続いており、
ホルムズ海峡をめぐる緊張は、日本に甚大な影響を及ぼしかねない状況にあります。

また、国内でも南海トラフ大地震を代表とする大規模災害への備えが、現実的な課題となっています。

そうした状況を踏まえると、
何かを見据えたものなのではないか、と少し考えてしまいました。

今回の報告書は、単なる振り返りではなく、
「次の危機にどう対応するか」という方向性を示したもののようです。

少し難しいテーマではありますが、
ポイントを絞って、わかりやすくまとめてみたいと思います。


■ 雇用調整助成金は“役に立った制度”だった

まず前提として、雇用調整助成金は
コロナ禍において一定の効果があったと評価されています。

特に、感染拡大の初期段階においては
急激な失業の増加を抑える役割を果たしました。

いわば「急ブレーキをかける制度」としては、
十分に機能していたと言えます。


■ ただし、限界もあった

一方で、今回の報告書では
その限界についてもはっきりと指摘されています。

大きなポイントは、
「雇用をずっと守り続けることはできない」という点です。

助成金によって一時的に雇用は維持できても、
制度が終了した後に離職が増えるケースも見られました。

また、長期間の休業は
働く意欲や生産性の低下につながる可能性もあります。

雇用を維持しながら事業の回復も目指そうとする中で、
ブレーキを踏みながらアクセルも踏んでいるような状態になり、
企業にとっても、働く側にとっても、負担が大きくなってしまう面がありました。


■ 「守る」から「つなぐ」へ

今回の報告書で最も重要なのは、この考え方です。

今後の雇用調整助成金は、
単に雇用を守るための制度ではなく、

「次の仕事や回復につなげるための制度」へと
考え方がシフトしていく
とされています。

具体的には、

・支援は短期・集中的に行う
・労働移動(転職や配置転換)を前提とする
・職業訓練やリスキリングと組み合わせる

といった方向性が示されています。


■ 企業・働く人への影響

この変化は、実務にも影響してきます。

企業側としては、
「雇用を維持し続ける前提」ではなく、
一時的に状況を乗り切るための手段として
雇調金を捉える必要が出てきます。

また、働く側にとっても、
「今の会社にとどまるための制度」ではなく、
次のステップに進むための準備期間という意味合いが
強くなっていくと考えられます。


■ 雇用調整助成金の役割をどう捉えるか

雇用調整助成金は、
急激な悪化を防ぐための制度といえます。

たとえるなら、
火事が起きているときに「水道代がもったいない」とは言っていられないのと同じで、
まずは被害の拡大を防ぐことが最優先になります。

そして、その後の対応を考えるための時間を確保する...
そうした役割を持つ制度だと考えると、イメージしやすいかもしれません。

ただし、その状態を長く続けることは難しく、
どこかで次の一手を考える必要があります。


■ このタイミングで公表された意味

先ほどの「なぜ今なのか?」という点については、
読み進める中で、少しずつ見え方が変わってきました。

何か特定の出来事を前提にしているというよりも、
「想定外のことはまた起こる」という前提で、
あらかじめ制度を整えた。

そしてもう一つ、
「次に同じような事態が起きたときの対応を見直す」
という方向性も感じられました。

雇用を守ることにとどまらず、
その先の動きまで視野に入れて制度を設計していく。

今回の報告書は、そうした方向への変化を
示しているものと受け止めています。


■ 少し個人的に感じたこと

今回の報告書は制度の話ではありますが、
読みながら感じたのは「備え」という視点でした。

何かが起きてから対応するのではなく、
起きるかもしれないことを前提に整えておく。

その考え方は、仕事の制度に限らず、
日常生活にも通じるものがあるように感じました。

私自身もこれをきっかけに、
防災備蓄の内容や量を見直さなければと思った次第です。


■ まとめ

雇用調整助成金はこれまで、
「雇用を守る制度」として捉えられてきました。

しかし今回の報告書からは、
それだけではない方向性も見えてきます。

守るだけでなく、
その先へどうつなげていくか。

そんな視点が、これからはより重要になっていくのかもしれません。

制度の変化は、
私たちの向き合い方にも少しずつ影響していきそうです。

今後の動きにも注目していきたいと思います。

2026.03.06

舞妓さんは「労働者」では?

 舞子さんの労働者性

舞妓さんは「労働者」なのか

2012年に、舞妓さんについて次のような記事を書きました。

京都で舞妓さん遊びをする機会があり、
事前にいろいろ調べているうちに、
仕事柄どうしても気になることが出てきたからです。

ありがたいことにこの記事は今でも多くの方に読んでいただいており、
舞妓さんの労働者性についてお問い合わせをいただくこともあります。

ただ、改めて読み返してみると、
当時の記事は思いつくままに書いてしまったため、
かなりわかりにくい...。

そこで今回は、当時の記事の内容を整理してまとめてみました。

元の記事はこちらです。
https://hanjou.jp/blog/2012/11/25/


舞妓さんについて調べてみると

舞妓さんについて調べてみると、次のようなことが分かりました。

1 京都の舞妓さんは、まず未成年であること

2 昔と違い義務教育を卒業してからでなければ舞妓さんにはなれないが、
高校を出てからでは年齢的に遅すぎるため、
一般的には中学卒業後すぐ置屋に住み込み修行をする

3 その間、衣食住の面倒は置屋が見てくれるが、
賃金の支払いはなく、お小遣い程度

4 一人前になるには着物代やお稽古代など莫大な費用がかかり、
それは置屋が一旦負担してくれるが、
5年ほど年季奉公(いわばタダ働き)をして返す
年季が明けるまで辞めることもできない

このような仕組みになっていることが分かりました。


もし労働者だとすれば大問題

ここで気になったのが、

もし舞妓さんが労働者だとすれば、これ大問題ではないか?
という点です。

まず、
満18歳未満の者は酒席に待する業務に就かせてはいけません。
(労働基準法第62条、年少者労働基準規則第8条)

また、
満18歳未満の者に午後10時以降の深夜労働をさせることもできません。
(労働基準法第61条)

さらに、
賃金を支払わないなんて問題外です。
(労働基準法第24条)

そして極めつけが年季奉公です。

年季奉公のような仕組みは、

・労働者が不当に拘束される
・賃金を中間で取られる
・職業選択の自由が奪われる

といった問題が起きるおそれがあるため、
絶対に禁止されている「労働者供給事業」に該当する可能性があります。
(職業安定法第44条)


労働者かどうかの判断基準

労働者であるかどうかは、
「使用従属性」があるかどうかで判断されます。

まず、
労務提供の形態が指揮監督下の労働であるかどうか
です。

例えば
・具体的な仕事の依頼や業務従事の指示に対して断る自由があるか
・業務の遂行方法について使用者の具体的な指揮命令を受けているか
などが判断要素になります。

さらに、
・報酬が労務の対償として支払われているか
・機械や器具などの負担関係
・他の仕事に従事することの制約(専属性)
といった事情も考慮されます。

舞妓さんの実態を見ると、
どう考えても労働者性がありそうに思えます。


監督署に聞いてみた

もやもやしていても仕方がないので、
管轄の労働基準監督署に聞いてみました。


「舞妓さんって、労働者ではないんですか?
もし労働者なら、ガールズバーで高校生を働かせた場合と同じく、
置屋さんは労働基準法違反になりますよね。

しかも労働基準法だけじゃなくて、
職業安定法とか派遣法とか、いろ~んな法律に抵触してしまうと思うんですが…。

仕事に対して許諾の自由もないし、
仕事に関しては『何時から何時までどこそこのお座敷でおもてなしをしなさい』
という具体的な指揮命令を受けているはずですし、
実態から見て使用従属性のある労働者だと思うんですが…。

舞妓さんについては、何か特別な通達でもあるんでしょうか?」


数時間後、監督官から電話がありました。

監督官
「調べてみたところ、舞妓さんは労働者ではないという見解です。
置屋は舞妓さんを一人前の芸子にするための『修行の場(学校)』という扱いです。
お酒の席で働いてもらいますが、それだけではなく踊りや芸、舞妓言葉の教育もしていますから。」


「でも労働者性の判断基準には当てはまることばかりですよね。」

監督官
「確かに、労働者性がないとは言えないんですけどね…。」


それでも少ししっくりこない

なんだかしっくりきません...。

要するに、
「京都の伝統文化を守るために そのように判断せざるを得ない」
ということなのだと思います。

ただ、監督官の言う
「修行の場(学校)」という説明には、どうしても引っかかるところがあります。

置屋はお座敷に舞妓さんを赴かせ、その対価として金銭を得ています。
通常の学校は、生徒をどこかに派遣し、それを商売にするなんてことはしていません。

やはり
これは労働者供給事業に該当するのではないか?
と考え込んでしまうわけです。


だからといって否定するものではありません

と言っても、
舞妓さんの存在を否定しているわけではもちろんありません。

置屋のシステムがなければ、
京都の舞妓文化は絶対に守れなかったと思います。

もし
「舞妓さんは労働者だ」
と判断されれば、このシステムは一瞬で壊れてしまいます。

つまり
舞妓さんという文化そのものが
日本からなくなってしまう

ということになります。


実際に問題になったこともある

過去には、
舞妓さんとして働いていた方が、
舞妓の生活や待遇の実態について訴え、
社会的に話題になったこともありました。

この問題は単なる文化の話ではなく、労働や人権の問題として議論されました。

そして個人的には、
「伝統だから法律の適用を考えなくてよい」ということであれば、どうしても納得がいきません。

法律は、本来すべての人に平等に適用されるものだからです。
もちろん、舞妓さんの文化そのものを否定するつもりはありません。
京都の舞妓文化が長く守られてきた背景には、
置屋のシステムが大きな役割を果たしてきたことも事実だと思います。

ただ、伝統文化であるからといって、
法律との関係をどのように説明するのかという問題は、
これからも考え続ける必要があるのではないかと感じています。

社会保険労務士 繁笑事務所

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