9月のとある日、人生初の舞妓さん遊びをしてきました。といっても「大金を使って夜通しドンチャン騒ぎ~」な~んて訳はもちろんなく、華麗な舞いを見ながらランチをいただき、一緒に「ト~ラ、ト~ラ、ト~ラ、トラ」で舞妓さんに遊んでもらうという、「お昼ごはんプラン」です。
景気が良かった昔と違い、お手軽にお茶屋遊びのまねごと??ができる時代になりました。
団体であれば更にお得。
この日は社労士ばかり30人程の団体でしたので、信じられないようなリーズナルブルなお値段でお座敷遊びを体験することができました。
夜であれば、この何倍も何十倍もかかるのだと思いますが、お昼間でも十分お茶屋遊びの気分は味わえます。
関西方面に社員旅行を企画している会社さん、「舞妓さんとのお昼ご飯プラン」めっちゃお勧めですよぉ~!!
・・・で、すんごく疑問に思ったのが「舞妓さんは労働者ではないのか??」ということ・・・
舞妓さん遊びをする前に、事前に知識を入れておこうとイロイロと調べていたら・・・
1、京都の舞妓さんは、まず未成年であるということ。
2、昔と違い義務教育を卒業してからでなければ舞妓さんにはなれないが、高校を出てからでは年齢的に遅すぎるので一般 的には中学卒業後すぐ置屋に住み込んで修行をし、そこからお座敷や舞台に通うということ。
3、その間、衣食住の面倒は置屋が見てくれるが、賃金の支払いはなく、お小遣いが貰える程度であるということ
4、一人前になるには、着物代やお稽古代と莫大な費用がかかり、それは置屋が一旦負担してくれるが、返済するために5年ほど年季奉公(タダ働き)をしなければならず、年季が明けるまで辞めることはできないこと。
このようなことがわかりました。
ここで・・・
もし舞妓さんが労働者であると仮定すれば、これ大問題です。
まず、満18歳未満の者は酒席に待する業務に就かせてはいけません(労働基準法第62条、年少者労働基準規則第8条)
満18歳未満の者に夜10時以降の深夜労働もさせることはできません。(労働基準法第61条)
賃金を支払わないなんて問題外です。(労働基準法第24条)
ましてや年季奉公なんて、労働者が不当に拘束されたり賃金をピンはねされたり、職業選択の自由を奪われたりするといった理由で絶対に禁止されている「労働者供給事業」に該当してしまいます。(職業安定法第44条)
労働者であるかどうかは「使用従属性」があるかどうか」で判断されます。
まず、労務提供の形態が指揮監督下の労働であるかどうかです。
①具体的な仕事の依頼、業務従事の指示などに対して諾否の自由があるか否か。
②業務の遂行方法について、使用者の具体的な指揮命令を受けているか否か。
次に、報酬が労務の対償として支払われていること、
最後に労働者性を補強する要素として次のようなものがあります。
①機械・器具の負担関係など事業者性の有無
②他社の業務に従事することの制約などの専属性の有無
もやもやしていても仕方がないので、管轄の監督署に聞いてみました。
私:「舞妓さんって、労働者ではないんですか?労働者やとすれば、高校生を働かせたガールズバーと同じく、置屋さんは労働基準法違反してることになりますよね~。労働基準法だけでなく、職業安定法とか、派遣法とか、いろ~んな法律に抵触してしまうと思うんですが・・・
仕事に対して許諾の自由もないし、仕事に関しては『何時から何時までどこそこのお座敷でおもてなしをしなさい』って具体的な指揮命令を受けているはずやし、実態から見て使用従属性のある労働者やと思うんですけど・・・
舞妓さんについては、なんか特別な通達でもあるんでしょうか?・・・
まさか、労務の対価である賃金を支払っていないから労働者と判断してないなんてことはありませんよね~。 」
監督官:「通達は聞いたことがありませんが、確かに18歳未満でも舞妓さんはお酒の席にも出るし、深夜もお座敷に出てますよね。労働者であれば、アウトですね。私も調べてみたいので後で電話します」
こんなやり取りの数時間後、監督官から電話がありました。
監督官:「調べてみたところ舞妓さんは労働者ではないという見解です。置屋さんは舞妓さんを一人前の芸子さんにするための修行の場(学校)という扱いです。お酒の席で働いてはもらいますが、それだけではなく踊りや芸や舞妓言葉の教育をしていますから」
私:「でも労働者性の判断基準には該当することばかりですよね~」
監督官「たしかに、労働者性がないとは言えないんですけどね~ それからね、管轄外の話ですが、児童福祉法に違反するため18歳未満の舞妓さんにお酌はさせてはいけないことにはなってるそうです。 」
なんだかしっくりきませんでしたが、要は京都の伝統文化を守るために監督署もそう判断せざるを得ないということだと思います。
しっくりしない理由は、監督署の「修行の場(学校)」という判断です。置屋さんはお座敷に舞妓さんを赴かせて金銭を得ています。
通常の学校は、生徒をどこかに派遣し、それを商売にするなんてことはしていません。
「やっぱりこれは、労働者供給事業に該当するのではなかろうか??」と、考え込んでしまう訳であります。
と言っても、舞妓さんの存在を否定している訳ではもちろんありません。
置屋さんのシステムがなければ、京都の舞妓文化は絶対に守れなかったと思います。
もし「舞妓さんは労働者だ!!」と判断されればその瞬間にこのシステムは壊れてしまい、舞妓さんを育てる土壌はなくなります。
「舞妓さんは日本からいなくなってしまう」ということになります。
この日は同じ枚方出身ということもあり、17歳の舞妓ちゃんといっぱいお話しをしました。
17歳とは思えないおしとやかさと気品と気配り・・・・
苦しい修行を耐え、覚悟を決めたその姿には圧倒的なオーラがありました。
ガールズバーの摘発と一緒くたにしてはイケマセンね。(^_^;)