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2021.10.04
社会保険の適用拡大 ~さらに、最低賃金の引き上げで、適用される従業員が大幅増大する可能性も~
来年10月以降、対象企業の要件変更により、社会保険の適用範囲が拡大されます。
すなわち、2022年10月からは従業員数101人以上の企業について、2024年10月には51人以上の企業について、下記の4つのすべての要件を満たす従業員は、社会保険の被保険者になります。
①週の所定労働時間が20時間以上30時間未満であること
②雇用期間が2か月を超えることが見込まれること
③賃金の月額が88,000円以上であること
④学生でないこと
今まで適用のなかった会社さんにとっては、今回の改正で自社に適用があるかどうかは非常に気になるところですね。
ここでは、特に誤解が生じやすい、従業員数のカウントについて説明したいと思います。
また、今般最低賃金が急上昇したことにより、要件➂の賃金月額を満たす従業員さんが大幅に増える可能性があることについても触れたいと思います。
1 従業員数のカウント方法~4要件該当者は除外
上記のとおり、来年10月からは従業員数101人以上、2024年10月には51人以上の企業が適用拡大の対象となります。ここでいう「従業員数」とは、「現在の厚生年金保険の適用対象者」のことです。
つまり、4要件を判断する段階で既に社会保険の被保険者となっている従業員の数ということになります。
このように、企業規模を判断する際の「従業員数」には、新たな4要件を満たす従業員は含まれない、という点に注意が必要です。
2 従業員数のカウント期間~カウントは今秋から始まっている
被保険者が101人(51人)以上の月と100人(50人)までの月が混在する場合は、直近12カ月のうち合計6カ月で101人(51人)を超えれば、その段階で適用対象となります。
改正法が適用されてからではなく、既に今秋から被保険者数がカウントされますので、現在被保険者数が100人前後の会社さんは、ご注意くださいね。
3 月額賃金に含まれないもの、月額賃金の具体的イメージ~適用拡大は広範囲の可能性
上記➂の要件である賃金月額88,000円には、賞与や残業代、通勤手当、家族手当などの、最低賃金に算入しないことが定められた賃金は含みません。
手当が何もない会社さんであれば、基本給が88,000円以上かどうかが目安になります。
では、賃金月額88,000円を満たすケースのイメージとは、どのようなものでしょう。時給換算で見てみましょう。
例えば、88,000円を満たす人が、上記要件①の最低ラインでもある、1週間の所定労働時間20時間で働く場合、どのぐらいの時間給になるのか、計算してみます。
365日÷7日×20時間÷12か月≒86.905時間
88,000円÷86.905時間≒1012.6円
つまり、時給≒1012.6円となります。
1週間で20時間を超えるパートさんも当然いらっしゃるでしょうから、月額賃金を満たすケースは少なくないのではないでしょうか。
ここ大阪府では今年、最低賃金が28円アップし、992円となりました。
仮に来年10月に21円アップすれば、最低賃金は1,013円になりますので、「一定規模の会社」で週所定労働時間20時間以上働く大阪のパートさんは、最低賃金で雇用されていても、必然的に雇用保険だけでなく社会保険の対象にもなるということです。
コロナ禍にもかかわらず、今年の最低賃金を大幅に引き上げ、さらに最低賃金アップの時期に社会保険適用拡大のタイミングを合わせたのは、大幅な社会保険適用拡大を見据えた、国の戦略のように思えます。
以上、社会保険の適用拡大の要件について書いてみました。
適用対象である企業規模は、改正前の501人以上から2024年には10分の1となる51人以上となります。また、賃金月額の要件(上記➂)も、最低賃金の引き上げに伴い、より充足されやすくなります。
その結果、社会保険適用拡大はかなりの広範囲にわたることが予想されますので、適用される可能性がある会社さんは、今のうちから対策を練り、ご準備くださいね。