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2013.11.16

ダンダリン第7話


今回は労災がテーマでした。
会社の帰途に歩道橋から転落し、死亡した労働者(ドリンク剤を毎朝飲んでいたので、以下「ドリンクおじさん」とします)に労災保険(労働者災害補償保険)の適用があるかが問題となりました。
会社の帰途に生じた事故であることから、まず、「通勤災害」の適否が考えられます。
ドリンクおじさんはその日、妻にDVDの返却を依頼されており、通勤する経路とは反対方向のレンタルショップを往復する途中で転落したのでした。
通勤災害は通勤の途中で生じたことを要し、通勤とは、労働者が就業に関し、居所と就業場所との往復等において、合理的な経路および方法により行うことをいいます。
今回のような、通勤経路の反対方向の往復は、合理的な経路とはいえません。
例外的に、日常生活に必要な行為による経路移動の中断は認められているものの、日常生活に必要な行為とは、日用品の購入、職業訓練・教育、選挙権の行使、病院での治療等であり、今回のDVD返却はこれにもあたらず、通勤の途中という要件を満たしません。

ところがその後、遺族と監督官との会話をきっかけに、ドリンクおじさんは死亡事故の前に、会社内の階段から転落して頭部を強打していたことが判明します。
仮に、会社内での転落によって頭部を負傷し、その負傷が原因で歩道橋から転落したのであれば、「業務災害」に該当する可能性があります。
そこで、ドリンクおじさんの解剖を警察に依頼しました。
結果的には、会社内での転落による頭部損傷はなく、歩道橋からの転落とは直接関係ないことが判明しました。
つまり、死亡事故は業務災害にもあたらず、労災保険は適用されないということになったのです。
(因みに、社長が監督官に対し、「本人のの不注意で会社の階段から転落したから労災は関係ない」旨の主張をしていましたが、労災保険は負傷者に過失があっても適用されるため、この主張は全く意味をなしません。)

帰り道にたまたまちょっと寄り道しただけで、通勤災害に当たらない。
会社内での負傷が原因でないため、業務災害にも該当しない。
結果、労災保険が全く下りないという釈然としない結果でドラマは終了してしまった訳ですが・・・
私的には、「債務不履行もしくは不法行為による損害賠償請求」を考えました。
(監督官のドラマなので、民事の話が出てこないのは当たり前なのですが
・・・)

会社の安全配慮義務違反があり、ドリンクおじさんが激務を強いられたため、正常な歩行が困難になるほどの精神的疲労や肉体的疲労が生じ、その結果、歩道橋から転落したとしたという構成です。
具体的には、事務職からの突然の配転、過酷な肉体労働、ケーブルむき出しという不十分な職場環境における感電転落事故、給与減少、社長からの罵詈雑言を浴びるパワハラ等から、心身ともに疲労困憊し、その結果、歩道橋から転落したということです。
因果関係の立証は難しいかもしれませんが、ドラマに出てきたような過酷な労働条件の下で働いていたことを知っていた遺族であれば特に、
このような訴訟提起は、現実的に十分あり得るのではないでしょうか?

5話は見逃し、6話はあまりに非現実的なストーリーだったので、もはや労働法に関連づけたドラマ作りを放棄したのかと思っていました。
しかし、今回は現実に問題となりうる限界事例的な内容で、けっこう見応えがありました。
ダンダリンの同僚である南三条が今後どうなるかという、ドラマの内容にも動きが出てきたので、次回が楽しみです。
特に社労士事務所との関わり、期待しています。

そして、そして・・・
今回のつっこみは「労災隠し」の意味についてです!!
ドラマの中で何度か出てきた「労災隠し」という言葉は、法的には、労災による死亡・休業についての報告義務違反をいいます。
ドリンクおじさんは、解剖の結果、職場での転落によっては負傷をしていなかったことからすれば、そもそも労災はなかったはずですし、かりに労災であっても、届出期限を徒過したのか否かは不明確です。
ドラマのどのシーンを指して「労災隠し」と言っているのか、釈然としませんでした。(-_-)

社会保険労務士 繁笑事務所

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