2013.10.24
物語自体は、いわゆる内定取消がテーマでした。
スポーツ用品メーカーが、その海外工場の水害による損失に対処すべく、内定の取消を考えるところからストーリーは始まります。
メーカーはすでに数人の内定取消をした段階で、さらに取消をすることの是非を社労士に相談します。
社労士は、「内定取消は解雇と同じであり、大量に取り消せばブラック企業との悪評が立つ」と言い、内定者側から内定を辞退させるような研修を実施するよう指南します。
そこでメーカーは急遽、駅前や無関係な商店前に立ち、大声で社歌を歌うという研修をさせます。
個人的な突っ込みどころは、大きく分けて2つありました。
①そもそも、本当に内定取消ができないケースなのか。
内定は、(解約権留保つき)雇用契約の成立であると解釈されることが多く、雇用契約の成立を前提とすると、内定の取消は解雇と同様に扱われます。
解雇には正当な理由が必要であり、本ケースのような場合は、整理解雇の要件で考えるのがしっくりくると思います。
整理解雇では、ⅰ必要性、ⅱ人選の妥当性、ⅲ解雇回避努力義務、ⅳ手続の相当性という4要素を基準として判断します。
ドラマでは、細かい事情が解らないので何ともいえませんが、工場の水害による損失が深刻で、経営努力による経費節減等では足りず、人員整理しなければ経営が困難なのであれば、ⅰ解雇の必要性はあります。
また、ⅱまだ実際に働いていない内定者から解雇していくのは不合理ではありませんし、ⅲ配転、出向等の手段を尽くしても解雇が避けられないのであれば、解雇回避努力義務を怠っているともいえません。
あとは、ⅳ内定者に対して、充分に事情説明をし、誠実に協議をすれば、手続は相当といえます。
これらのことをクリアすれば、内定取消は妥当である可能性が高いと思います。
内定者に対しては、上述のように、取消せざるをえない事情を誠実に説明すれば、悪評も立たないのではないでしょうか?
なお、ドラマでは有能社員の流出を恐れて、早期退職者を募らない方針を採っていました。
早期退職者募集は、可能であればするに越したことはないものの、ⅲ解雇回避努力義務の不可欠の要素とまでいえるかは疑問で、募らないからといって必ずしも義務違反となるとは限りません。
②研修方法の稚拙さ
ドラマでの社員研修は、メーカー名が大きく書かれたタスキをかけ、大声で社歌を歌うというものでした。
恥ずかしさや、体力的な過酷さなどにより、内定辞退に仕向けるという手法のようです。
内定者は、店の前で歌われた店主や、駅の前の警備員から苦情を受けており、そのような苦情にも嫌気がさして辞退者が続出していました。
しかし、こんな研修は、実施させているメーカー自体に苦情や批判が集まり、それこそ会社の評判を落とします。
適法に内定取消ができるかもしれない中で、内定辞退を取り付けようと、あえて過酷な研修を課した結果、却って、最も恐れていたはずである、会社の悪評を招くことになるのです。
大きなタスキや社歌は、ストーリーを解りやすくするための演出かもしれませんが、過酷な研修という提案自体、社労士のアドバイスとしてはあまりにもお粗末です。(まあ・・・ドラマですから仕方ありませんが・・・)
ドラマの中で、社労士事務所の所長が、指南した社労士を叱責していました。
また、労働基準監督官が、まじめに業務に取り組んでいる社労士とは区別して、指南した社労士のやり口を批判していました。
社労士を悪役的に描いたことに対するフォローともいえるこれらのシーンですが、現実の社労士を代弁するものとして評価することもでき、我々社労士にとってはありがたいことです。
突っ込みどころは、以上の二つでしたが・・・
今回のドラマで、一番印象に残ったのは、主人公の指導係で真面目を絵に描いたようなキャラの「南三条」の入浴シーンです。
なんと・・・「シャンプーハット」を被って頭を洗っていました。
ものすごい懐かしさといい大人が被っているという違和感で、ツボにハマってしまいました。(^◇^)
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